ヘーゲルもカント同様、哲学の歴史に大きな影響を与えた偉大な哲学者です。カントが個人の内面について考察を深めたのに対し、ヘーゲルは社会や国家、更には人間の歴史にまでスケールを広げて考察を行いました。
「素人がわかりやすく解説してみた」シリーズのリンク集は以下の記事になります。
ヘーゲルの生きた時代-フランス革命-

ヘーゲルは今から200年ほど前のドイツの哲学者です。
ヘーゲルが生きた時代はフランス革命が終わった後の社会で、無秩序状態に陥っていました。
フランス革命とは簡単に言うと、市民が王様を倒して自由を勝ち取るための革命でした。それまで市民を支配していた王様がいなくなって人々が自由を手に入れるはずでしたが、支配する王様がいなくなると無秩序になったのですね。
例えば学校のクラスを想像してみてください。先生が生徒を管理しています。先生がいなければ生徒はもっと自由になれるかもしれません。ですが実際に先生がいなくなったらどうなるでしょうか?学級崩壊になると思いませんか?
以前カントについて説明しましたが、彼は個人の内面に着目した哲学者でした。人が物を見るとはどういうことかを考察しました。また人生の目的は幸せになることではなく、幸せに値する人間になることだと主張しました。
カントの教えは素晴らしいですが、現実の社会は無秩序状態になっています。
ヘーゲルはそのような社会状況を見て思いました。カントは個人に関しての哲学を深めたが、それだけでは足りないと。
個人は他者や社会によって影響を受けているのです。ヘーゲルは個人だけでなく社会全体についての哲学を展開した偉大な哲学者の一人です。
絶対精神-世界は無数の神様からできている

ヘーゲルは社会全体、さらにはその社会全体が移り変わる歴史について考察しました。とてもスケールが大きいですね。
ヘーゲルは社会全体には絶対精神が宿っていると考えました。
はい。意味不明ですね。
でも日本人はこの絶対精神がイメージしやすい国民なのです。「八百万(ヤオロズ)の神」という言葉を聞いたことがありませんか?全てのものには神様が宿っているという考え方です。日本にはたくさんの神社がありますが、その全てに神様が宿っていると考えられていますよね。山にも川にも神様が宿っています。
ヘーゲルの絶対精神もそんなイメージで捉えることが出来ます。
世界にある全てのものには絶対精神という神様が宿っているという考え方です。
だから何?という感じですよね。
もう少し説明を続けますので、お付き合いください。
世界の本質は自由である

ヘーゲルは言いました。絶対精神は自由を求めていると。
つまり絶対精神によってできているこの世界は自由を求めて進み続ける。
その過程がこの世界の歴史であると考えました。
この世界は自由を求めて進み続けているので、もしもあなたが自由を求めて生きるならば、あなたの人生はうまくいきます。逆にあなたが古いものに縛られて安心安定を求め、自由を求めて前に進まないならば、あなたの人生はただただ衰退していく人生になります。
絶対精神や自由など突拍子のない言葉がたくさん出てきて意味不明ですよね。
なぜヘーゲルが自由にこだわったか。それはヘーゲルが生きた時代背景にも関係していると思います。何故ならフランス革命が起こった後ですからね。人々が自由を求めている時代でした。
ただ、ヘーゲルの説明は現代を生きる私たちから見ても結構合っているんです。
人類の歴史は自由が実現していく歴史になっています。昔は王様が国民を支配していたので、自由な人は王様一人でした。ですが時代が進むにつれて民主制が始まり、国民一人一人に自由が与えられていきます。
あなたは今どのくらい自由であると感じていますか?
私はサラリーマンなので平日は8時間働かなくてはなりません。その時間は自由でないかもしれません。しかしながら働き方改革で残業時間が規制されるなど、人間の働く時間はどんどん短くなっています。今後は週休3日になる日が来るかもしれません。またフリーランスやyoutuberなど、会社に縛られず個人で自由に働く人も増えてきています。
ヘーゲルが言ったように、人間の歴史は自由に向かって進んでいるのではないでしょうか?
弁証法-歴史が自由を実現する過程

ヘーゲルは世界が自由を実現していく過程を説明するために、弁証法という方法を用いました。
弁証法とは簡単に言うと、何か二つのものが対立することで、そのどちらでもない第3のより良いものが出来上がると言う方法です。
例を挙げましょう。例えば友達と意見が合わずに喧嘩しているとします。二人はお互いに自分の意見が正しいと考えています。ここで二人は話し合いを行い、まったく新しい第3の考えを思いつきました。二人はその新しい考え方に納得し、仲直りしました。めでたしめでたし。
この例では二人の意見が対立することにより、まったく新しい考えが生まれ、二人の絆はより深まることとなりました。
ヘーゲルは、世界の歴史も弁証法により自由を実現することで発展していくと考えたのです。
残念ながら世界の歴史は争いの歴史です。しかし争いを経て世界は自由を実現していくのです。
世界は弁証法により前に進みます。その先には私たちの自由が実現される未来が待っているのです。
ヘーゲルの思想は専門用語が多くて難しいですが、たまには彼の思想を思い出してください。そしてあなた自身は自由へと向かっているか、自分自身に尋ねてみてはいかがでしょうか?